リリーは浅丘ルリ子が演じた旅回りの歌手で、本名は松岡清子。第11作「寅次郎忘れな草」で寅さんと出会います。この記事では、主な登場4作品、二人の出会いと別れ、リリーの人物像を紹介します。
「男はつらいよ」シリーズを語る上で、このリリーというマドンナの存在を無視することはできません。
なぜなら、女性に惚れてはフラれ、惚れられては逃げ腰になる寅さんが、唯一所帯を持ってもうまくやっていけそうな、そう思えるマドンナだったからです。
そして、この記事では、第11・15・25・48作と1997年公開の特別篇を中心に、リリーと寅さんの関係を振り返ります。
⇒「「男はつらいよ」に登場した寅さんの歴代マドンナ47人を徹底ガイド」 この記事では、「男はつらいよ」シリーズに登場した寅さんと満男の歴代マドンナを詳しく紹介していきたいと思います。 この記事では、第1作〜第48作から、寅さんと満男のマドンナとして取り上げる登場人物47人 ...
![]()
「男はつらいよ」に登場した寅さんの歴代マドンナ47人の紹介と演じた女優さん徹底ガイド
リリーは他のマドンナたちとは違い、寅さんと本音で語り合い、弱みを見せ合える仲でした。
もしかしたら、リリーは寅さんにとって一番結婚相手としてふさわしい存在のマドンナだったのかもしれません。
リリーがマドンナを務める主な4作品は、第11・15・25・48作です。
今回は、寅さんとリリーの馴れ初めから、4部作という長い期間で紡いできた二人の物語を振り返りながら、マドンナ役・リリーというマドンナの人物像に迫っていきたいと思います。
「男はつらいよ」に登場するリリーの略歴
リリーの生い立ち
リリーは、東京生まれで小学生の頃から家出をし、すでにフーテン暮らしをしていました。
母親は幼いリリーをほったらかしにして、好きな男と遊び回っていたらしく、リリーは「中学生の時から母親に育てられたとは思っていない」と、母親に直接言っています。
リリーの仕事は、全国をドサ回りしながら歌う歌手でした。
しかし、決して華やかな歌手というわけではなく、どちらかと言うと売れない二流歌手といったほうが正しいのかもしれません。
リリーは、テイチクという芸能事務所らしきところに所属していたため、一応自分が歌う場所は事務所があらかじめ用意してくれていたようです。
なので、事務所から歌う場所が提供されて、そこへ一人向かっていくという感じだったのではないでしょうか。
そのことは、11作「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」で、リリーが網走駅を降りた時に、事務所から紹介されたマネージャーのような人物がリリーをタクシーで迎えに来るシーンからも判断できます。
リリーの年齢は作中で出てくることは1度もありませんでした。
なので、おおよその年齢で捉えることしかできません。
俳優・浅丘ルリ子の実年齢を、そのまま登場人物・リリーの年齢とみなすことはできません。
以下では年齢の推定を外し、作品の公開年を目安に出来事を整理します。
「男はつらいよ」の作中で登場した時のリリーの略歴を簡単にまとめると、以下のようになります。
・北海道の網走で寅さんと出会う。
・寅さんとケンカ別れした後、清寿司の店主・石田良吉(毒蝮三太夫)と結婚し、千葉県の新松戸に定住するが、離婚。
■1975年
・北海道の函館で寅さんと再会。
・寅さんとの結婚話を1度は了承するも、寅さんに直接会うと結婚の話にならず、そのまま寅さんの元を去る。
■1980年
・沖縄でライブ中に吐血し、たがみ病院に入院。
・たがみ病院に見舞いに来た寅さんと再会。
・寅さんに「俺と所帯を持つか?」と言われるが、冗談話にしかできなくて、そのまま寅さんと別れる。
・その後、群馬県のバス停で寅さんと再会。(その後の詳細は不明)
■1995年
・死に別れた夫(結婚生活3年)の遺産で鹿児島県奄美大島の加計呂麻島に小さな家を購入。
・空腹で腹を空かした寅さんが転がり込み、1カ月近くこの家で同棲生活をする。
・久しぶりにとらやを訪問。
・柴又から鹿児島にある家まで寅さんに送ってもらい、そのまま同棲生活を始めるが、その後しばらくして寅さんとケンカをして離れ離れになる。
リリーの本名
リリーの本名は、松岡清子です。
ちなみに、唄を歌っている時の芸名は、リリー松岡という名で舞台に立っていました。
清子という名は、11作「男はつらいよ 寅次郎忘れな草」で、金の工面を頼んできた母親がこの名前でリリーのことを呼んでいます。
男はつらいよシリーズでリリーが登場する作品
「男はつらいよ」に登場する寅さんとリリーの馴れ初め
寅さんがリリーを初めて見たのは、北海道の網走駅へ向かう夜行列車の中でした。
寅さんは一人で泣いて座っているリリーが目に留まり、気になってしまいます。
しかし、この時点でリリーのほうではまだ寅さんの存在に気付いていません。
寅さんとリリーが初めて接触したのは、網走橋です。
ここでレコードの売をしていた寅さんに、リリーのほうから声をかけてくるのです。
寅さんが自分と同じような根無し草の生活をしていることを知ったリリーは、この時寅さんに対して何かしらの興味を抱いたに違いありません。
それは、寅さんの方も同じであったことでしょう。
しかし、この後二人はまた元の他人のように別れていくだけでした。
これが、寅さんとリリーの馴れ初めです。
これをきっかけにして、寅さんとリリーは風に吹かれ全国を旅しながらいろんな街で再び出会い、そしてまた別れるを繰り返していくようになります。
「男はつらいよ」各作品においての寅さんとリリーの関わり
リリーは、寅さんの境遇(旅暮らし)に最も近いマドンナ
映画「男はつらいよ」には、数多くのマドンナが登場しています。
リリーは、その中でも最も寅さんの境遇に近いマドンナだったのではないでしょうか?
リリーの父親の話が作中に出てこないので何とも言えませんが、リリーの母親も寅さんと同様に子供をほったらかしにするような酷い親でした。
なので、寅さんと同様に血の繋がった母親からの愛情を受けずに育ったのは一緒であると言えるでしょう。
そして、中学生の頃にはすでに家を飛び出し、親に頼らずフーテン暮らしをしていたというのも寅さんと全く同じ人生を歩んできています。
映画の中でこの二人は、自分たちと世間一般の人たちとの違いを風刺して笑い合うシーンがあります。
それは、15作「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」で、兵藤謙次郎(船越英二)と汽車に乗っている時でした。
兵藤を一般人と見立てて、こんな会話をします。
リリー:「寅さん常識あるの?」
寅さん:「あるよお前、大常識だよ。」
リリー:「(笑)」
寅さん:「お前ないんじゃないの?」
リリー:「ある(笑)」
まるで、常識のない自分たちの境遇を楽しむかのように笑い合っています。
寅さんとこんな会話ができるのは、数多くのマドンナの中でリリーしかいないでしょう。
このシーンは、同じ境遇で育ってきた寅さんとリリーの親密度がわかる象徴的なシーンではないかと思うのです。
寅さんが本気でケンカできたのはリリーだけ
寅さんが「男はつらいよ」に登場するマドンナと本気でケンカをするというシーンは、そんなに多くはありません。
少ない中で挙げようとすれば、12作目のりつ子(岸惠子)と33作目の風子(中原理恵)、そしてリリーくらいではないでしょうか。
しかし、りつ子や風子とのケンカは、リリーのものとは少し違います。
寅さんとリリーのケンカは、相思相愛を前提として勃発します。
つまり、お互いのズレを修復するための確認行為のように思えてくるのです。
二人がよくケンカしていたのは、男と女のあり方についてのズレではないでしょうか。
寅さんから見た男と女のあり方
・女を幸せにするのは男
・黙って男は耐えるもの
・男は引き際が大事
リリーから見た男と女のあり方
・男と女の恋愛はカッコ悪いもの
・男はみっともなくてもいいから女に気持ちを伝えるもの
・体裁を気にする男は卑怯者
意外と一般の男女でも当てはまりそうなズレではないでしょうか。
決して、どちらが悪いといった問題ではないのですが、寅さんがもう少しリリーに甘えることができれば、お互いこんなに苦労することはなかったのだろうと思います。
1997年公開の特別篇と、寅さん・リリーのバス停でのシーン
山田洋次監督が神がかっていると思えるのが、1997年に特別篇として再構成した作品が「寅次郎ハイビスカスの花」だったことです。
「男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花 特別篇」は25作目の本編をそのまま使い、冒頭と最後に甥の満男が寅さんを懐かしむといったナレーションが挟まれているだけです。
なぜ、第25作「寅次郎ハイビスカスの花」が特別篇のもとになったのでしょうか。以下は、その選択についての筆者の解釈です。
それは、寅さんとリリーのバス停でのシーンを最後に持ってきたかったからではないかと私は思っています。
このシーンで、寅さんとリリーはなぜか不思議な会話のやり取りをします。
リリー:「以前お兄さんにお世話になった女ですよ。」
寅さん:「はて?こんないい女をお世話した覚えはございませんが。」
私はこのシーンを観ると、なぜか二人が時空を超えた場所で出会っているような、そんな感覚にとらわれてしまいます。
それは完全に時間が止まってしまっているような感覚です。
もし、この二人が天国で再会するようなことがあれば、きっとこんなシチュエーションで、こんな会話のやり取りをしているのではないかと思ってしまうのです。
「男はつらいよ」に登場するマドンナ・リリー(浅丘ルリ子)の人物紹介のまとめ
この記事では、寅さんとリリーの馴れ初めから、4部作という長い期間で紡いできた二人の物語を振り返りながら、マドンナ役・リリーというマドンナの人物像に迫ってみました。
こうしてみると、やはり「男はつらいよ」シリーズに登場したマドンナの中で、リリーという存在はとても大きかったことがわかるでしょう。
最終的に寅さんとリリーは結ばれることはありませんでしたが、何か目に見えない運命の糸を手繰り寄せながら、二人は巡り合ったのではないかと思ってしまうのです。